薬品病態知識 胆嚢・胆管結石とおなかの痛み
胆嚢、胆管は肝臓で作られた胆汁を胆嚢で濃縮して胆管を通して十二指腸へ流す管のことを言います。胆汁は食事で取った脂肪の分解に関わりますが、消化酵素ではありません。この胆汁のなかに含まれているコレステロールやビリルビンが結晶となり大きくなってできたものを結石といいます。胆嚢内にできたものが胆嚢結石、肝臓内の胆管にできたものが肝内胆管結石、胆嚢から総胆管に出てきたものや、総胆管にできたものが、総胆管結石と呼ばれています(図1)。一般には、この胆汁を流す道にできた結石はまとめて胆道結石と呼ばれています。
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症状
胆道結石は、症状が全くない場合もありますが、結石が胆嚢の出口や胆管の十二指腸への出口に嵌ってしまうと、痛みが生じます(図2)。また、脂っこいものを食べた後に心靴窩部(みぞおち)や右季肋部(みぞおちの右)が痛んだり、血液検査で肝臓・胆道の酵素であるGOT、GPT、LAP、γ-GTP(ガンマ-GTP)、ALPの上昇が見られたりすると胆道結石が疑われます。胆管結石で感染を起こすと化膿性胆管炎といって胆道全体に感染が及び、黄疸や胆道感染により発熱します。この様な場合には緊急入院や緊急の治療が必要な状態と言えます。
MRCP検査
MRI検査は主に胆管の画像診断に用いられ、この場合をMRCP(磁気共鳴胆道膵管造影)検査といいます。造影剤を胆管や膵管(すいかん)に直接注入する検査では体に悪い影響が生じるおそれもありますが、MRCP検査ではかなり鮮明な画像が得られるため、造影剤を使う必要はありません。
おなかの痛み
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内臓痛とは、胃や小腸、大腸、胆嚢など管状の臓器の急激な収縮、つまり痙攣により生じる痛みで、おなかの痛みの代表的なものです。漠然とした上腹部痛や右上腹部痛、下腹部痛といった場合が多く、痛みの性状としては周期的に強まったり、やわらいだりするのが特徴です。痛みが強い場合には、吐き気や嘔吐をともないます。いわゆる「さしこみ」と呼ばれる痛みがこれにあたります。
体性痛は、内臓をとりまく腹膜や腸間膜などに、炎症や刺激が加わり生じるもので、内臓痛よりも痛みの部位がはっきりとしています。一般に刺すような鋭い痛みで持続的です。通常、その部位を圧迫すると強い痛みがみられます。
一方、痛みの原因となった臓器とはまったく異なる場所に感じる痛みを関連痛といいます。これは神経支配によって生じるもので、たとえば胆嚢の痛みが右肩に、心臓の痛みが左肩に感じられる場合などがそのよい例です。
斜視辞書
胆嚢の中にできる胆石はそれだけではなんの症状もありません。いわゆる「無症状胆石」の状態です。しかし胆石が胆嚢の出口である細い胆嚢管につまると急に強い痛みが生じます。これが胆石発作と呼ばれるものです。
この痛みは、胆嚢が過緊張あるいは痙攣しておこる内臓痛で、上腹部(みぞおち)や右上腹部(あばら骨の下)に差し込むような間欠的な痛みが特徴です。この状態が長く続いたり、細菌感染が加わると胆嚢炎がおこってきます。
このような状態になると胆嚢の炎症が周囲の腹膜を刺激し、体性痛が生じ、右上腹部に限局した強い持続痛がみられます。同時に右上腹部にはっきりとした圧痛も認められるようになります。
このほか、胆石発作や胆嚢炎では右上腹部の痛みとともに右肩に痛みを感じることがよくあります。これは関連痛によるものです。
鎮痙剤
内臓の運動を支配する神経には、動きを抑制する交感神経と、逆に亢進させる副交感神経とがあります。さきほど内臓痛は管腔臓器の急激な収縮によっておこると説明しましたが、鎮痙剤はおもに副交感神経を抑制することで内臓の痙攣を解除し、痛みをやわらげます。急性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、急性腸炎、胆石症などの痛みはこの種のくすりでたいていおさまります。
副交感神経を抑制する薬剤は一般に抗コリン剤と呼ばれていますが、臭化ブチルスコポラミン(商品名:ブスコパン)、臭化ブトロピウム(コリオパン)などが代表的なものです。このくすりを使用する場合に注意すべき点は、副交感神経を抑制することにともなう副作用です。これには羞明(《しゅうめい》・目がまぶしくなる)、動悸、口渇、便秘などがあります。
フロプロピオン(コスパノン)は、直接交感神経を介する作用で内臓の異常収縮を改善します。とくに胆管や膵管の末端部にある括約筋に的確に作用するため、胆石発作や胆嚢炎、膵炎でよくもちいられます。
消炎鎮痛剤
NASAIDsは腹痛(内臓痛)に対してはあまり使われません。 それでも胆石症や尿管結石発作で鎮痙剤が無効のときこの消炎鎮痛剤が有効なことがあります。炎症が腹膜などにおよんだ体性痛では、ある程度効果がありますが、同時に抗生剤の投与が必要です。
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